近年、少子高齢化や人口減少に伴い、空き家の増加が社会問題となっています。放置された空き家は、老朽化による倒壊の危険や犯罪の温床となるリスクがあり、所有者にとっても大きな負担となります。適切に対策を講じることで、空き家を有効活用し、資産価値を守ることが可能です。ここでは、空き家の問題点と具体的な活用方法、さらに事前に対策を立てる重要性について解説します。
1. 空き家の問題化
空き家が発生すると、次のような問題が生じる可能性があります。
(1) 認知症などによる判断能力の喪失
親が高齢になり、認知症を発症すると、財産の管理や売却の判断ができなくなる可能性があります。その結果、空き家の活用が滞り、問題が深刻化するケースが増えています。
(2) 家にまつわる相続トラブル
相続人が複数いる場合、誰が家を相続するのか、売却するのか、活用するのかで意見が対立し、トラブルが発生することがあります。遺言がないと、遺産分割協議が長期化し、空き家が放置されることも。
(3) 多すぎて困る家財道具
長年住んだ家には、多くの家財道具が残されています。処分には時間と費用がかかり、放置すると空き家の活用を妨げる要因になります。
2. 空き家の3つの活用法
(1) 売る
- すぐに現金収入が得られる
- 固定資産税の負担がなくなる
- 管理の手間と時間が不要になる
- 思い入れのある家を手放すことになる
- 仲介手数料や測量費用が発生する
- 売却時に譲渡所得税がかかる
条件に合えば「空き家特例」や「マイホーム特例」が適用され、譲渡所得から最大3,000万円の控除が受けられます。
(2) 貸す
- 家を壊さずに活用できる
- 定期的に家賃収入が得られる
- 税負担の軽減
- 人が住むことで家の劣化を防げる
- リフォームや修繕費用がかかる
- 管理の手間と時間が必要
- 借り手が見つからない場合は収入が得られない
- 賃借人とのトラブルが発生する可能性がある
(3) 壊して土地を売る・貸す
- 収入を得られる
- 家の管理の手間がなくなる
- 駐車場や商業施設として活用できる
- 解体費用がかかる
- 更地にすると固定資産税が高くなる
- 貸地にする場合には管理が必要
解体費用は建物の構造や立地条件によって異なります。特に、重機が入れない場所では費用が高くなります。
3. 親が元気なうちにできる対策
空き家の問題を未然に防ぐためには、親が元気なうちに対策を立てることが重要です。
(1) 任意後見制度
認知症になる前に、自ら後見人を選び契約を結ぶ制度です。公証人役場で手続きを行い、将来的な財産管理を安心して任せることができます。
(2) 遺言
相続トラブルを防ぐためには、遺言を作成することが有効です。特に「公正証書遺言」は法的効力が強く、無用な争いを避けるためにおすすめです。
(3) 生前整理
家の片づけを進めておくことで、子どもに負担をかけずに済みます。特に価値のある物品や不要な家財道具を整理しておくと、相続手続きがスムーズになります。
(4) 家族信託
家族信託とは、家族に財産の管理・活用を任せる制度です。家庭裁判所の関与が不要で、親の意思を反映した財産管理が可能になります。
4. 空き家問題を解決するためのポイント
- 早めに空き家の活用方法を検討する
- 不動産会社や専門家に相談し、適切な対策を講じる
- 相続対策をしっかりと行い、家族間のトラブルを防ぐ
- 定期的なメンテナンスを行い、資産価値を維持する
- 空き家対策に関する補助金や優遇措置を活用する
まとめ
空き家の問題を放置すると、管理の負担が増え、トラブルの原因になります。売却、賃貸、解体などの活用方法を検討し、親が元気なうちに対策を立てることが大切です。
- 売る: すぐに現金化でき、管理負担がなくなる
- 貸す: 定期的な収入が得られ、家を維持できる
- 壊して土地を売る・貸す: 管理の手間が減り、新たな活用が可能
また、任意後見制度、遺言、生前整理、家族信託を活用することで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
空き家の問題にお悩みの方は、早めに専門家へ相談し、最適な方法を検討することをおすすめします。